架空の世界の中の自動車
ジャン・コクトーの「オルフェ」(1950年)では、黒塗りのロールズ・ロイスは冥界との通信を可能にする手段でした。
ウォルト・ディズニーの「うっかり教授」(61年)や、「チキチキバンバン」(68年)では、自動車は空を飛び、水を渡り、主人公の危難を救ってくれます。
映画という空想の世界で、自動車は擬人化され、さらに機械としての理想である知性さえもっています。
自動車は、すくなくとも映画の中では一足早く、"インテリジェンス"でした。
・・・しかし自動車が人を愛し、自由意志で行動をはじめるとなると事はおだやかでありません。
けれども同じくディズニーの、「ラブ・バッグ」(69年)ではそれが実現しました。
そしてその主人公の自動車がVWビートルであることで、アメリカ人なら誰でも納得します。
フォードやシボレーでは、こうはいかなかったでしょう。
中古車情報でも人気の高いVWビートルは、自動車が日常生活の道具となりきった戦後のアメリカ人にとってさえ、独得で親密な心情的価値をもっていました。